日本財団 図書館


 

しないということは、プライバシー保護等の事情があったとしても、行政の情報化の遅れといわざるを得ない。特に、地方公共団体間のネットワーク化を阻んできた個人情報保護条例については、後述することとするが、平成8年3月に、自治省の住民記録システムのネットワーク化構想に関する研究会報告書が発表されるなど、新しい大きな動きがでてきており、注目されている。

住民記録システムは、住民の基本情報を登録し、住民への行政サービス提供の根拠となっているものである。いわば、行政と住民を結ぶもっとも基本的な情報が登録されている訳であるから、このいわゆる基本4情報(氏名、住所、生年月日、性別)は、市町村における利用にとどまるものではないと考えられるが、従来、個人情報保護条例等の制約から、これらシステムのネットワーク化は実現してこなかった経緯がある。これに対して、自治体間の住民記録システムの基本4情報を市町村間でネットワーク接続し、相互に利用しようとする方向がだされたことは、以下のような可能性をもつものとして評価される。

?@ 住所変更の一元化

国民が住所を登録している行政機関は国・地方を含めると10機関近くになるのが普通である。引越しを行った場合に、各機関に登録してある住所の変更を一度届ければ済むようにしようというのが、ワン・ストップ住所変更システムである。このためには、市町村間のネットワーク構築が不可欠であり、その基本的な方向性が上記の報告書で明らかにされたのである。

?A 共通番号の可能性

国民の大半を登録し、住所等の更新を最も確実に実施しているのが、住民記録であることは間違いない。このことは、住民記録システム間のネットワークを進める場合に、市町村間で共通して利用されることになる個人番号が、県、国を通じて共通して利用できるように拡張されることを期待させる。すなわち、住民記録システムをべースにして、共通番号を住民に付与し、これが、市町村間、県、国において利用できる様になれば、例えば、ワン・ストップ住所変更を可能にすることになろう。逆にいえば、この共通番号がなければ、複数の行政機関に記録されている基本4情報の一元的な変更は困難であり、不可能に近いこととなる。

?B 本人・住所確認

国の行政機関が実施している事務処理の中で、住所確認を必要とするものは多いが、

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION